JOURNALコラム

いまさら聞けない大学入試改革。コロナ禍での2021年度大学入試はどうなる?

コロナの影響もひと段落と思いきや、
東京では4日連続3桁台とまだまだ予断を許さない
日々が続いていますね。

社会情勢が不安な中で、授業の遅れによる学習状況の
習熟度に差が出ていることも指摘されており、
大学入試がどうなるのか、ということも心配ですよね。

6月中旬には文部科学省が公式に「共通テスト」の日程変更を
行わないことも発表いたしました。
第2日程や総合型選抜など一部配慮された面はありますが、
受験生にとってはまさに正念場の1年と言えるでしょう。

今回はそんな2021年度の大学入試展望を見ていく上で、
そもそも大学入試改革とは何なのか?から
改めて振り返っていきます。

不安定な年だからこそ、情報をしっかり収集して
受験に臨んでいくことが必要不可欠。
今までと大きく変わった大学入試を把握していきましょう。

大学入試改革はなぜ行われるのか

そもそも大学入試改革が行われる背景には、
社会に求められる人材に変化が起きている点が挙げられます。

これまで大学入試の中で行われていた「センター試験」では、
主に「知識と技能」を問われてきました。
現代で一般的に「学力」と呼ばれる能力ですね。

しかし、現代は先の読めない社会となってきており、
常に産業・技術の進化も起きています。
そんな中で、今考えられている「学力」の要素だけで、
果たして社会で生活していく、ましてや社会で活躍できる人材が
本当に生まれるでしょうか。

そこで行われたのが、大学入試改革です。
これまでの学力偏重評価から、真に社会に必要な人材指標として、
思考力・判断力・表現力を測ることに重きを置き、
またグローバル社会で活躍していけるように
「英語でのコミュニケーション力」も重視することになりました。

高大接続改革

※文部科学省 高大接続改革(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/koudai/index.htm)より

問題を見つけ、どのように解決するか思考する力。
自分や他者の意見を踏まえ、今後の見通しを判断する力。
自分の意見を他者に伝えていく表現する力。
そして、国際社会でも上記3つを叶える英語コミュニケーション力。
これらが今の世の中に大事であることは、言わずもがなですね。

もちろんこれまでに重視してきた「知識と技能」を評価しない、
とうわけではなく、新たな柱として増えたと考えてください。
「知識と技能」をベースに、「思考力・判断力・表現力」を磨き、
さらに「主体性・多様性・協働性」を身につけていく。
これが新時代の「学力」を構成する要素と言えるでしょう。

大学入試改革は具体的にどう変わる?

では、実際の大学入試はこれまでとどう変わるのでしょうか?
大きなポイントは、
「①大学入試センター試験の廃止と大学共通テストの導入」、
「②4技能を重視した英語民間試験の活用」
「③より多面的に評価される総合選抜型・学校推薦型選抜」
の3点だと言われています。
それぞれについて見ていきましょう。

①大学入試センター試験の廃止と大学共通テストの導入

①大学入試センター試験の廃止と大学共通テストの導入

大学入試を受けたことのある方であれば、
本番は別としても一度はセンター試験の問題に触れたことがあるでしょう。
センター試験の特徴は、何と言っても幅広い分野と
マークシート方式での受験形態であることです。

共通テストでも幅広い分野であることは変わりません。
科目数も従来通り30科目の中からの選択となりますし、
出題範囲に影響が出ていることもありません。

しかし、大きく変わるのはマークシート方式に加えて、
「国語」と「数学(数学Ⅰ、および数学Ⅰ・A)」で
記述方式が追加されることになる点です。
※「理科」や「地歴・公民」でも今後導入予定。

記述式を追加する意図は、先述した重視するポイントの変化が大きく、
問題を早期に発見して課題解決のための思考をしていく力を
問うためというのが大きいでしょう。
試験時間の延長も含め、課題に向き合う姿勢なども
同時に問われているかもしれませんね。

しかし、実は2021年度大学入試において、
記述方式の導入は見送りとなりました。
一体なぜ取りやめになったのでしょうか?

これは、記述問題の採点が難しいことにあると言われています。
元々この記述問題については、民間企業にその採点を
委ねることになっていました。
しかし、少子化とは言え年間50万人以上が受験する試験において、
公平に採点できるのか、という指摘が相次いだわけです。

文部科学省はマークシート方式とは別の試験日を設定し、
記述方式の問題受験を数ヶ月早めることも検討していましたが、
高校側からの前倒し反対にあったこともあり、
その後様々な議論がなされた結果、
実施は見送られることになりました。

まだまだ技術的な課題がある共通テストは、
2021年度単体で見ればそこまで影響値はないかもしれません。
しかし、今後を見据えて問題の傾向がこれまでのセンター試験と
大きく変わる可能性もあります。
時事問題に対する意識や、回答までのプロセスを問われる力など、
今のうちから磨いておくに越したことはないでしょう。

②4技能を重視した英語民間試験の活用

これまでセンター試験では、英語に対して
「読む(リーディング)」「聞く(リスニング)」の
2つのみが評価されてきました。
リスニング自体も2006年度からの実施でしたし、
英語力を適切に評価できていたかと言われると疑問が残りますよね。

そこで出てきたのが「英語4技能」を評価することです。
ここでいう英語4技能とは、従来の「読む」「聞く」に加え、
「書く(ライティング)」と「話す(スピーキング)」を
指しています。

どちらもグローバル社会において自己を表現するために
必要不可欠な能力であり、日本人が苦手と言われる分野です。
それを共通テストから図っていくために提唱されたのが
英語民間試験の活用です。

具体的には、下記の資格・検定が国によって認められています。
・ケンブリッジ英語検定
・TOEFL iBTテスト
・IELTS(International English Language Testing System)
・TOEIC(Listening & Reading Test)
 +TOEIC S&W(Speaking & Writing Tests)
・GTEC
・TEAP(Test of English for Academic Purposes)
・TEAP CBT(Test of English for Academic Purposes Computer Based Test)
・実用英語技能検定(英検)

これらの資格・検定を「CEFR(セファール)」と呼ばれる、
「ヨーロッパ言語共通参照枠」に基づいてランク・スコア化し、
それを実際の英語の点数に割り当てるために、
「大学入試英語成績提供システム」を導入する予定でした。

しかし、実際に共通テストでの導入は2024年度まで先送りとなりました。
これも先ほどの共通テスト記述方式と同様に、
高校や高校生からの反対にあったのが現実です。
複数回受けることのできる資格・検定では、
どうしても経済的に裕福な層が有利になってしまうということが
その主な理由だと言われています。

ただ、いずれにしても今後導入される内容であることは間違いなく、
実際に一部の私立大学では既に2020年度から導入を実施しています。
国立大学では9割が未導入という状態ではありますが、
グローバル社会で必要な能力であることは明白でしょう。

③より多面的に評価される総合選抜型・学校推薦型選抜

最後の変更点は、総合選抜型・学校推薦型選抜の中身です。
他の2つに比べると話題に上ることは少ないですが、
実はこれも大きな変更点です。

これまで大学入試は、「一般入試」「AO入試」「推薦入試」という
区分をされてきました。
それが、大学入試改革により、それぞれ下記の名称に変更となっています。
・一般入試→一般型選抜
・AO入試→総合型選抜
・推薦入試→学校推薦型選抜

「総合型選抜」と「学校推薦型選抜」は細かく規定されており、
総合型選抜は9月以降の出願で11月以降~3月末までの合格発表、
学校推薦型選抜は11月の出願で合格発表は12月以降~
一般選抜期日の10日前までとなっています。
「学校推薦型選抜」は学部等の募集定員5割未満までと
募集定員も決まっています。

どちらかというと大学側に任せていた印象のあるこれらの入試も、
文部科学省により「アドミッションポリシー」を明確にすることが
義務付けられています。
そして何より、選抜方法にも大きな変化が生まれました。

まず調査書です。
一般的に内申書とも呼ばれていますが、これまでは評定平均値が
その内容の骨子でした。
しかし、2021年度からは、評定平均値だけでなく、
部活動やボランティア活動、留学などの海外経験、
資格・検定の取得、各種表彰の記録、その他特技・特長などを、
より詳細に記入する形になりました。
高校生活において、課外活動も重視することになり、
ただ勉強だけしていればいいというわけではなくなっています。

そして、学力検査の実施も重要な点です。
これは小論文、プレゼンテーション、各種実技、資格・検定の取得や成績、
その他テストの実施などから学力を測り、共通テストの結果を評価対象に
している大学もあります。
先述の調査書も相まって、多面的に評価していくことが規定されました。

いずれも、あいまいな基準ではなく、明確にその個人を評価できるよう
多面的に測っていく方針であることの裏付けになっています。
一般選抜を避けるためのものではなく、優秀な人材を受け入れるための
試験区分としての存在意義を確立しているとも言えますね。

コロナ禍での2021年度大学入試はどうなる?

コロナ禍での2021年度大学入試はどうなる?

さて、ここまで大学入試改革の内容を見てきましたが、
実際大学入試の展望はどうなっているのでしょうか?

変革の年はリスクを避けるために、安定志向になる、
ということはよく言われます。
2021年度で言うと、共通テストの導入などによって、
大学入試対策にこれまでの「過去問」を利用することが難しく、
傾向が変わってしまうこともあり得るため、
一般入試より先に「合格」を狙える「総合型選抜」や
「学校推薦型選抜」に受験生が流れる可能性は高いです。
実際に、多くの塾・予備校の入試予測でもこの指摘は上がっており、
ここで優秀な人材の確保を狙っている大学関係者も多いでしょう。

そして忘れてはいけないのが新型コロナの影響です。
既に文部科学省が発表していますが、
共通テストの第1日程に変更はなく、
2021年1月16日・17日の実施が決まっています。
新たに現役生対象に第2日程が1月30日・31日に設けられましたが、
2週間程度では正直何も変わらないという印象です。
従来の追試と異なり、東京・大阪だけではなく47都道府県での
実施となったことが救いでしょうか。

また、「総合型選抜」は2週間程度出願が繰り下げになりましたが、
「学校推薦型選抜」は日程そのままになっています。
大学個別の入試も今のところ日程変更の動きは少ない状況です。
ただ、東京大学や国際教養大学などは
オンライン入試の導入を発表しており、
今後他の大学が追従していくことは予想されます。

もちろんコロナを含め、社会情勢によってはこれから
変わることも出てくると思います。
しかし、現状ではどうしても学習状況に融通が利き、
早い段階から入試対策を行える進学校が有利になってしまうため、
より「総合型選抜」や「学校推薦型選抜」に流れやすくなる傾向に
あると言えるでしょう。
塾や予備校で学校の授業を補完する受験生も多いでしょうが、
周囲の声に流されず、情報をしっかり入手して
受験に向かっていけるかが重要なことに変わりはありません。

先送りになった事項が多いとはいえ、
これまでと大きく変わる2021年度大学入試。
まずはその情報をしっかり自分で把握するところから始めてくださいね。

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